悔いなんてものは残すもんじゃない。


おれはいつだって後悔なんてものは残すことなくやってきたつもりだ。












ぐだぐだ考える前にもう身体は動いてるし、

やってしまったらしまったで、結局は全部自分の糧になってたりするもんで。









まぁ、物凄いプラス思考って言われりゃそれまでだが。




















そんなおれの頭ん中で、唯一『悔い』と言えるモノは、

お前を一人、残しちまったこと。













*** 唯一の『 愛 』 ***















怒ってんだろぉなぁ。







・・・・・一人で、泣いてねぇだろうな?


誰か、他の男の前で、腕の中で・・・・涙見せてんじゃねぇだろうな?










・・・・まぁ、それはそれでいいかもしれねぇ。

そんなこと、とやかく言える筋合い、おれにはねぇよな。


ああ、分かってる。



そうだな。


おれが、おれの方が、











寂しいんだよな。
















苦しいんだよな。



















あー。キツイっつの。まったく。

・・・・・情けねぇ。




家族も友人も、居心地のいい家も故郷も、平穏な暮らしもなにもかも投げ捨てておれについてくる、

その固いお前の覚悟をいとも簡単に粉々にしてしまったのはおれで。







ああ、それでも、


こんな危険極まりない海の真ん中で、絶対と言っていいほど出会うはずのないお前に、

バッタリ会うことを考えてる。


ずっとずっと。


お前の確かな温もりが微かになって、消えてしまって、

おぼろげな記憶の中でだけのモノになってしまっても、それでも考えずにはいられねぇんだよ。










が今ここにいたら ってよ。


































・・・・」






久しぶりに呟いた愛しい女の名前。


頭では考えていても、口に出したのは本当に久しぶりで。



懐かしさとか、愛しさとか・・・・・ぐちゃぐちゃになって、溢れて、

痛くてしかたねぇ。










「会いてぇ・・・」



呟いたつもりが、声は枯れてほとんど息といっていいものを吐き出した。














おれにとっての唯一のこの後悔は、きっとおれを一生苦しめる。



















*** fin ***