* Girl I Want To Guard *












「ねぇー、ルフィ」

「・・・・・・・」

「いい加減離してくれないかなぁー?」

「・・・・・・・」


ふぅ と、短く溜息を付くと、はお手上げだというように、そのまま空を仰いだ。

ルフィのよく伸び縮みする腕は、今はの細い華奢な身体に回されていて。

の肩に顔を埋めているルフィの表情はからは見えず、

同じようにルフィにも、の困り果てた顔は見えていないだろう。





二人の身体が密着してから、もうどの位経ったのだろう。




大好きなルフィに抱きしめられて、イヤなわけではないが、

ちょいと長すぎるし、返答もない相手では、少しだけ居心地が悪い。











どうしてこの状況になったのか。





それは、が怪我をしたからで。

が怪我をしたのはルフィを庇ったからで。


なぜルフィを庇うという行動に出たかというと、

今日は珍しくも、同業者と出会ってしまったからで。









そう。


確か、サンジのオヤツを食べていたときだった。










++++










「ん〜〜〜っ。おいしっ!」

ちゃん、おかわりあるから食べたかったら言ってくれ」

「ありがと、サンジさん。

 でも、サンジさんの作るものっておいし過ぎて最近食べすぎちゃってたから、今日は止めとくわ。」

「じゃー!おれにくれっ!」

「ぁあっ、ルフィ!それあたしの食べかけ・・・っ」

「・・・ってんめっ、ルフィ!!!何食ってんだ、クソ野郎ぉおおおお!!!」

「さ、サンジさん!いいって!あたし構わないからっ」

がこう言ってんだからいいじゃんかよぅ」

「そぉおおいう問題じゃねぇええんだよぉお、クソゴムぅうう!!

 ちゃんの・・・、ちゃんの食べかけを・・・!!てぇええめぇええ!!!」


そこかよ。

と、ウソップのツッコミが入らないのは、彼が見張り台に登っているからで。

ルフィに足技を繰り出そうとするサンジを宥めようと、が立ち上がろうとした、その時。






「おいっ!!海賊船が見えっぞっ!!!」

ウソップの声が船内に木霊した。








の身体がビクリと強張る。


大海賊時代といっても、海は果てしなく広く、

そうやたら滅多に同業者と会うというわけでもない。




その上、は海賊の経験がまだ浅く、

こういう事態にまだ慣れていないのだ。






緊張の面持ちで、傍に立っているルフィを見る。

ルフィはその視線に気付いて、二カッと笑うと、

「ちゃんとおれが守ってやっからよ。心配すんな!」

そう力強く言い放って、敵を迎え撃つため走り出した。














その言葉だけで、あたしは笑顔になれる。

笑っていられる。


どんなに追い詰められた状況に陥っても、ルフィが「大丈夫」と笑うなら

あたしも笑顔を返すことが出来るだろう。





先が見えない、不安とう霧が晴れていく。






ルフィの笑顔には不思議な力があると感じるのは、あたしだけだろうか・・・。











++++











うちの戦闘員が合わされば、大体の敵は片付けられてしまう。

そして今回も、相手の同業者は名もない海賊で、あっという間に白黒ついてしまっていた。









ウソップが、戦闘時に付いたメリー号の傷を見て嘆きながら道具を取りに甲板を走り、

チョッパーも怪我人がいないか確かめるために走り回っていた。



長いようで短かった戦闘が終わったと、皆が信じて疑わなかった。







だがそのとき、ルフィの足元に倒れている男の、その手が微かに動くのを、

だけは見ることが出来た。






危ない!!







そう思った時には身体は勝手に動いていて。






「ルフィ!!」








何かとルフィが振り向く前に、ルフィの身体はによって突き飛ばされ、

思いっきり顔面から床にダイブする。


「うべっ!!?」




今では、の足元に転がっている男が、握っていた短剣を振り上げるのと、

ナミとサンジが叫ぶのがほぼ同時だった。



!!」「ちゃん!!」












「っっ!!!」




声を上げる間もなく、の左の太ももからは既に大量の赤い液体が噴き出していた。









っ!!!」

既に起き上がっていたルフィの目は、目の前の出来事が信じられないとでもいうように見開かれ、

そして、もうその瞬間には、ルフィの拳は空を切っていた。















++++
















「よし!これで大丈夫だぞ」

「ありがと、チョッパー。大分痛み引いたみたい」

「今痛み止め打ったからな。

 血の量のわりには傷が浅かったし、安静にしてればすぐ塞がるよ。」

ふぅ と一息ついて汗を拭くような動作をして、チョッパーが包帯を巻く。


せっせせっせと自分を治療してくれた、この小さな船医さんを見て、

は改めて感謝と尊敬で胸がいっぱいになった。




「じゃあ、あんたたち!をベットまで運びなさいよっ」

「ナミ、大丈夫だって」

「ダぁメよ!ほらちょっとゾロ!」

返事は返さず、でも今回ばかりは素直にナミに従い、を運ぼうと腕を伸ばす。




と、いつの間に立っていたのか、ルフィがその手を制した。

ゾロは黙って引く。





「・・・ルフィ?」


からは、帽子の影でルフィの表情が見えない。




ルフィはドカっとの前に腰を下ろすと、強い力でを抱きしめた。























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 ぎゃあ!ちいっと長いので前後半にしますね!