おれが君をどの位好きか
君は全然分かってない・・・
* 特別 *
「じゃぁ、今日は買出しに出るわよぉっ!!」
ナミの威勢のいい声が響く。
「おれ、おれ、医療の本見たいっ!!」
「じゃぁ、おれも本屋行くぜ。薬品も買いてェし。
行くだろ?チョッパー、薬屋」「おう!!」
「じゃぁ、私も。丁度読む本も尽きてきた頃だし」
「で、船番はゾロね。っていうか寝てるから決定!!」
「あ?ルフィは??」
「船長さんはもう随分前に町の方に行ったみたいよ」
「んじゃぁ、おれたちも早く行こうぜぇ〜!!」
そんなこんなで、みんなはそれぞれの目的地へ足を運ぶ。
残されたのはサンジとの二人。
サンジとしてはこの町の珍しい食材を買いたかったのだが、
を一人で街中を歩かせるわけにはいかない。
「ちゃん。どこか行きたいとこあったら、おれ付き合うよ?」
「ん?あ、いいよいいよ。サンジさんは食材探ししたいでしょ?
あたしは他にお目当てのものあるんだっ」
と、は久しぶりの買い物に嬉しそうにニコニコ笑う。
久々の上陸で、やっぱりも年頃だし、
一人でゆっくり買い物をしたいという気持ちもあることはサンジにも分かったが、
断られるのはやはり面白くない。
というか女一人で繁華街を歩くのは危ない。
ここは治安も悪い。
いくらは護身術を習ってたからって、の力では男が本気になったら
ひとたまりもないだろう。
「ちゃんは可愛いから、やっぱり危ねェよ。
おれと一緒に居た方が安全だぜ。荷物持ちもやるし」
「自分の荷物は自分で持ちます」
こうピシャリと言われてしまうと返しようがない。
サンジを頼りにしてないとかいうのではなく、はこうなのだ。
これが彼女の性格。
自分で出来ることは自分でやる。他人に迷惑はかけない。
良く言えばしっかりもの。悪く言えば頑固なのだ。
サンジも彼女の性格は分かっている。分かっているのだが、
女性が危ない目に遭うかもしれないのに、ほっとくことはどうしても出来ない。
相手がなら尚更のことだ。
「ぃい〜や!おれはちゃんを護衛するぜっ!!
変なヤロウどもに襲われたら堪ったもんじゃねェしな」
「サンジさんはナミちゃんのとこに行かなくてもいいの?」
「え?」
「なんであたしなの?」
「それはおれがちゃんが好きだからさ。
愛する女性を守るのは当たり前だろう?」
サンジ即答。
「信じられないな。サンジさんのそういうとこ」
ボソっと言うとは歩き出した。
「え、あ、ちゃんっ!?」
「ありがと。でも、あたし気をつけるから」
「あ・・・」
サンジはその後姿を見つめたまましばらく動けなかった。
な、なんでなんだ?ちゃん
おれはこんなにも真剣なのに
おれ女性に対しては嘘つかねェのに
即答したのがいけなかったのか?
少しくらい悩めばよかったのか?
っていうか何気におれのことだけ「さん」付けだし
なんかおれだけ一枚壁があるみてェ・・・
ぁあ〜〜〜〜。へこむ・・・
「お嬢さん、可愛いねぇ!このネックレス、お嬢さんに似合うと思うよ!!」
「ホント、きれいね、これなんの貝?」
ここは繁華街の中心。
もう随分店を回ったが、品物を見ているだけでは幸せそうだ。
手にはまだ、財布が入ったハンドバックしか持っていない。
「ねぇ、ねぇ。そこのあんた!これ試着してみたら?」
「君絶対似合うよ!!この帽子」
「べっぴんさんだねぇ!この林檎試食してきなよっ。蜜がたっぷりで旨いからさぁ」
歩いていると引っ切り無しに声を掛けられる。
それは彼女の外見のせいでもあった。
の長いまつ毛や大きな瞳、ふっくらした唇は化粧などを必要としない天然モノ。
表情には子供のようなあどけなさがあるが、身体は大したものだった。
ナミ程ではないが、胸もあるし、くびれもあり、
ぴっちりとしたTシャツがそれを引き立てている。
だが、その外見は時にはトラブルの引き金になることを、
はまだ分かってはいない。
「はぁ〜〜〜・・・」
これでもう何度目だろう。
溜息とともに煙草の煙を吐き出す。
サンジは仕方なく一人で食材を見て回っていたが、
頭に浮かぶのはのことばかり。
きゃあきゃあと、サンジを見て声を掛けるおねぇさんにも気付かない様子のサンジ。
これは重症だ。
ちゃん。大丈夫かな
店のエロおやじにしつこく声掛けられてねェかな
ちゃん可愛いからなぁ〜
結構顔幼ねェし危ない趣味のおねぇさんにからまれたりしちまうかも
いや、それならまだしも、それがヤロウだったら・・・・
問答無用、ブッ殺すっ!!!!
考えれば考えるほどイヤな考えが思考を駆け巡る。
サンジは居ても立ってもいられなくなり、駆け出した。
やっぱりちゃんが心配だ!!
待っててくれ!ちゃんっ!!!
「あ、れぇ〜〜?ここどこよ?」
は店を見て回っていたら繁華街の外れれまで来てしまった。
ここは繁華街の中心とは雰囲気がまるで違う。
ゴミが散らばっていて、なんとも陰気臭い。
なんかここヤバそう・・・・
が来た道を戻ろうとした時、
「こんなとこであんたみたいなおねぇさんが何してんの?」
急に腕を掴まれ、グイっと乱暴に引っ張られる。
「ぃったっ!!」
「へェ、すんげェ上玉」
「何なんですか!?」
「こんなとこにノコノコ来るなんて、あんたもしかして犯られに来たの?」
「なっ!!?」
「おい、どうしたんだよ?」
「今晩のおかずみつけたんだよっ」
なんとも下品な笑みを浮かべ男が喋ると、
影の奥からなんともガラの悪い男達が4,5人出て来た。
は焦り出す。
一人ならまだ何とかなると思っていたが、
大の男がこんなに居たら逃げられないかもしれない。
「離して下さい!!」
男達がを見て騒ぎ出す。
一人がの後に廻り、腕を抑える。
「っ!!?」
初めての感覚、初めての恐怖には震える。
「やぁっ、いやああああぁっ!!!」
無我夢中で叫ぶ。
「おい、足押さえてろっ!!」
「だれか口塞げ!!」
やだ・・・
いや・・・っ!!!
誰かっ、
誰か・・・っ!!
サンジさんっ!!!
「っサンジさんっ!!サンジさんっ!!!
助けてサンジさんっ!!!」
口から自然と零れ出るのは彼の名前。
「サンジさんっ、サン、んんっ!!?」
男達はの小さな口に布を詰め込む。
絶望にの瞳から涙が溢れ出る。
「っとと、ここは何処だ?」
勢いよく走りすぎて一気に繁華街の外れまで来てしまったサンジ。
ここで急ブレーキ。
恋するラブコックセンサーが反応する。
近くにちゃんがいる!!?
その時だ。
「っサンジさんっ!!サンジさんっ!!!
助けてサンジさんっ!!!」
ぬわぁにぃっ!!?
今の叫び声はのものだ。サンジは焦る。
「ちゃんっ!?ちゃんっ!!」
声のする方にサンジは駆け出した。
「!!?」
目の前に広がるのは、泣き叫んでいるのあられもない姿と、
そのに覆いかぶさっている男達の姿。
恐怖で染まった瞳がサンジの姿を捉えた。
「サ、サンジさんっ!!!」
「・・・!!!」
ヤベェ、
久々に抑えが効かなくなりそうだ・・・
怒りで言葉もないサンジは冷静にそう思った。
その後は、に泣いて止められるまで
サンジは怒りのままに男達を蹴り続けていた。
「サンジさん!!サンジさんっ!!!
その人達死んじゃうっ!!もう止めてっ!!!」
「こんなクソ以下のヤロウなんて生きる価値もねェっ!!」
「サンジさん、もういい!!もういいからっ!!!」
は必死に叫ぶ。
もう、相手の意識は大分前から飛んでいた。
だが、に言われたからといって、サンジの怒りは収まる筈もなかった。
「なんでこんなヤツら庇うんだ!?ちゃん!!
今おれが来なかったらアイツらに何されてたか分かってんのか!?」
「・・・・・もう、いいから・・・。お願い・・。
ここから離れたい・・・」
の涙は止まらない。
「・・・・・・わりぃ、・・・ちゃん」
一番傷ついてんのはちゃんだってのに
なにやってんだ、おれは・・・
「ちゃん、歩ける?」
サンジは返り血の付いた手をズボンで素早く拭うと手を差し出した。
「うん」
そう言っては無理に二コリと笑う。
なぜだか、その笑顔を見た瞬間サンジは、
が愛しくて、愛しくて、たまらなくなった。
胸が締め付けられる。
伸ばした手と手が触れ合って
が立ち上がる、その瞬間にサンジは勢いよく手を引っ張ると、
がサンジの胸に飛び込むかたちになった。
「わっ!?」
驚きに目をパチクリさせるを
サンジは強く、強く抱き締めた。
「サ、サンジさんっ!?」
「・・・怖い思いさせてゴメン」
「サンジさんは全く悪くないじゃないっ。
・・・あたしが馬鹿だったの。
あたしの方こそ、今朝は・・・ごめんなさい」
そう言うと、の瞳に再び涙が滲む。
そのままはサンジの胸で静かに泣き出した。
クソッ、
あいつ等、息の根止めておくんだったぜ・・・っ
サンジはが落ち着くまでずっと背中をさすっていた。
どの位時間が経ったのだろう。も落ち着いたようだ。
「ちゃん、そろそろ行こうか?ナミさん達も心配してるぜ、きっと。」
「・・・」
「ちゃん?」
はサンジの胸の中で動こうとしない。
「どうした?」
サンジは優しく囁いた。
は無言で首を振る。
「ん?」
すると、の手が静かにサンジの背中に廻された。
「えっ!?」
ガラにもなく動揺するサンジ。
ちょ、ちょっと待て!!
なんだ!?どうしたんだ、ちゃん!?
見下ろすと、の潤んだ瞳とぶつかった。
「サンジさん・・・」
こののサンジを呼ぶ声に、
さっきから必死で保ってきたサンジの理性は、呆気なくも吹き飛んでしまった。
「サンジさん、あたし・・・・・・ンっ」
そのさきは、サンジの唇によって遮られる。
「んん、・・・ゃ・・っ、サンジさ・・・」
がサンジの胸を弱々しく押し返す。
けれどの力ではビクともせず、そのまま、もっと深いキスになる。
そのままサンジの唇は首筋へと移っていく。
「ひゃぁっ!?サ、サンジさんっ!!」
「おっ、ちゃん感度良いね。」
「そ、そうじゃなくてっ!!やだ、ちょっと離してっ!!
な、何考えてるのよ!?サンジさん!!」
「ん?だっておれちゃんが好きだし」
「またそんなこと言って・・・」
「おれ、本気だぜ?」
急にサンジが真剣な顔をしたので、は口を噤む。
「だって、サンジさん、ナミちゃんにだってロビンにだって、
同じようなこと言ってるじゃない」
「おれが恋人として本気で愛したいと思うのも、手に入れたいと思うのも、
ちゃんしかいない」
綺麗なブルーのサンジの瞳。
は彼の瞳に吸い込まれる感覚に陥いった。
「それを言うなら、なんでちゃんはおれだけ「さん」付けなんだい?
クソマリモのことも、クソゴムのことも呼び捨てだろ?
おれ結構気にしてたんだけどな〜」
「え、それは・・・」
がサンジから目を逸らす。
その反応に、サンジはを逃がさまいとして、
の細い腰に廻している手に力を込めた。
「それは?」
「あたしね・・・、」
「・・・」
は戸惑いながらも、口を開いた。
「意識してる人にはどうしても他人行儀っぽくなっちゃうのよね・・・。
・・・・・・だから・・・・、」
「それは、つまり?」
「その・・・・」
「ちゃんが?」
「そう、あたしが・・・」
「おれのことを?」
「サンジさんのことを・・・」
「「好き・・・・・」」
その時の二人の恥ずかしそうな笑顔は、
すぐ傍で倒れてる男達からもよく見えていて。
「おい、なんだこのほのぼのとした雰囲気は?」
「黙れ、静かにしろ。この空気を邪魔なんてしようもんなら、
おれ達は完全にアウトだ」
なんて囁き合っていたことを、
幸せ一杯の二人には気付くよしもなかった。
END
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確実に男達は死んでるだろって感じですよね。
ということで、初サンジです。
初サンジはへたれでしたね。
ホントはもっとエロくするはずが、
私には文才が微塵にもないので無理でした。
うん・・・。サンジさん好きですV