「ねぇ 先輩。」


   「ん?」


   「今日家誰もいないんだけど、家寄ってかない?」






















   * ありきたりな特別 *




















   リョーマからの突然の誘いには必要以上に驚いてしまった。





   「えっ?あっ、いいのっ?」

   「今日珍しく部活早く終わったしね。」


   そう。

   だからこそ今日はこうやって一緒に下校しているのだ。

   いつもだったらこうはいかない。

   青春学園の中でも男子テニス部は特に盛んで、

   最後に校門を出るのはほとんどテニス部だ。



   は文化部の中ではハードな吹奏楽部だが

   大会前にならないとそこまで遅くなることはなくて。



   付き合い始めてから約2ヶ月。



   一緒に下校など数えるほどしかない。

   お互いの家に言った回数など片手で十分足りるくらいだ。

   しかもリョーマの家に行くのは今回が初めて。


   前々から行きたいとは思っていたが、

   迷惑だろうか、などという考えが先に浮かんでしまい、

   なかなか言い出せずにいた。


   けれど今日は一緒に帰れるだけでなく、

   家に来ない?と誘ってくれたのだ。


   は言葉じゃ言い表せない感動を噛み締めるように

   ギュッと目を瞑った。



   「嫌なら別にいいんだけど?」

   急に黙ってしまったの顔を覗き込むと

   リョーマは少し拗ねたように呟き、スタスタと行ってしまった。


   「あっ、リョーマ君っ。違うってば!」

   勘違いしたリョーマの後を慌てて追う。

   隣に着くと斜め少し下のリョーマの顔をチラッと見た。


   バチッと 目が合う。


   「あっ、あのね、ほんとはね、」

   リョーマから慌てて目を離し、は話し出した。

   「すっごく行きたかったんだよ。リョーマ君の部屋とか見たかったし。

    行きたいって前から思ってたんだけど、私たちって部活忙しいでしょ?

    だから、日にち合う日少ないし、言い出すタイミングもなくて・・・」

   「ふぅん。」

   「ほ、ほんとなんだよ!?」

   素っ気無い返事に少しむきになり、

   リョーマの方に顔を向けた。

   「っ!!」

   リョーマはずっとこっちを見ていたらしい。

   思った以上に顔が近かったので、少しは後ずさった。



   「・・・ふぅん。」




   それは、




   さっきの返事とは違っていって、


   少し笑いながら、真っ直ぐにを見つめてくる。


   その表情は、試合の時に見せるような生意気な表情で、


   「やっと言った」と言わんばかりだ。



   リョーマには何もかも見透かさられているようで、


   少しだけ悔しい気がした。



   けれど、やっぱりその表情はかっこいいので


   怒る気には到底なれそうもない。
















   「先輩顔紅い。」


   の気持ちを知ってか知らずか、

   平然とリョーマが話し掛けてくる。


   「リョーマ君がじっと見てくるからっ。」

   「オレのせい?」

   「そうっ。リョーマ君のせい!」

   がそう言い切ると、



   「しょうがないじゃん。

    ここ最近、まともに先輩の顔みてないんだから。」


   と 一言。





































   うそ・・・
















   そんな言葉、







   聞けると思ってなかった。





   なんか、



   めちゃくちゃ嬉しいんですけどっ。

















   「・・・リョーマ君。」

   「なに?」

   「手、繋いでいい?」

   「・・・いいけど、」

   「けど?」

   「オレ、手汗掻いてるよ?」

   「・・・ここ最近、繋いでなかったし。」

   「・・・。」




   真っ赤な顔して恥ずかしそうに言う







   少し横目で少し見て







   リョーマは無言で手を差し出した。








































   そして、










   会話らしい会話もせずに、









   でも手はしっかりと繋がれたままで、










   二人はリョーマの家に着いた。




















   「うわぁ。なんか立派そうなお家だねぇ。」

   リョーマの家がお寺ということは知っていたが、

   やはり目の当たりにすると、威厳があり

   驚いてしまう。


   「ただいま。」

   「あれ?誰も居ないんじゃなかったの?」

   「ん、一応。」

   「そっ。」


   リョーマの家に彼女として招かれることが嬉しくて、

   いつもより長く一緒に居れることが嬉しくて、

   はちょっとしたことでついつい

   リョーマに口出ししてしまっていた。





   そんなにリョーマが

   
   「先輩いつもより口数多いね。」


   「えっ。うるさい?」

   「うん。」

   「そんな・・・っ」



   はっきり言わなくても・・・。





   しょげるを横目に

   短く溜息をつくと、

   リョーマは口を開いた。



   「別に嫌で言ったんじゃないんだけど。」



   「え?」

   顔を上げたはリョーマの方を見ると、

   リョーマはもう廊下を渡っていた。

   「早く上がれば?」

   「あっ、うんっ。」

   玄関で一人突っ立っていた

   慌てて靴を脱いだ。



   「リョーマ君っ。」

   リョーマが振り向く。

   「ありがとね。」

   少しはにかんだように笑いながら言う

   リョーマは一瞬驚いたように見つめただけで、

   すぐ前を向いてしまったけど、

   はそれだけで十分だった。


































   あぁ、


















   なんかもう・・・



































   私この人大好きだ・・・。











































   「ねぇ。」



   「ねぇ、先輩。」



   「先輩っ!」


   「っはぇ!?」


   いつの間にかここはリョーマの部屋で、

   二人してベッドに腰掛けていた。




   やばい、やばい。

   ボーっとしちゃってた。

   せっかくのリョーマ君との時間なのに!




   「ごめん、もう一回言ってくれる?」

   は申し訳なさそうに手を合わせる。



   リョーマは少し不機嫌そうに眉毛を上げて


   「やだ。」


   と 一言。



   リョーマが少し怒り気味なのに戸惑う

   「ごめん、なんかそんな大事な話してた?」


   「別に。」


   「怒ってる?」


   「先輩。」

   「なっ、何!?」


   「一応オレあんたの彼氏だけど、」

   「う、ん。」

   「先輩は二人きりで彼氏の部屋に居て緊張とかしないの?」

   「え?」

   「オレが話してても上の空だったしね。」

   「っしてるよ!物凄くっ!!」

   「先輩うそ下手すぎ。」

   「嘘なんかじゃ、」

   「先輩。」

   の言葉に被せるようにして、リョーマがを呼ぶ。

   
   「オレは凄い緊張してるんだけど。」

   そう言っての手を掴む。

   そしてリョーマは掴んだの手を

   そのまま自分の胸のところに持っていった。

   
   は黙ってリョーマを見つめる。







   トクン


   トクン


   トクン・・・










   「先輩分かる?」

   「・・・すごく動いてる・・みたい」

   「そうゆうこと。」


   「あっ、私は確かめさせないからね!!」

   はリョーマの胸から手を離し、慌てて自分の胸を隠す仕草をする。

   「先輩、オレのことそんな風に見てたの?」

   と、呆れ顔のリョーマ。

   「いや、別に・・。」

   の顔が赤くなる。










   「先輩。」



   リョーマの手がの髪に触れる。

   その仕草には少し体を硬くする。




   「そんな顔されると、理性保つの大変なんだけど。」








   言うが早いが、




   の唇に自分の唇を軽く押し当てた。




























   「リョ、マくん・・・っ!!?」

   いきなりのことで目も開いたままの状態でキスされたは、

   顔は真っ赤になり一人パニックに陥っている。





   その姿を見て、

   おかしそうに笑うリョーマ。






































   落ち着いた、

   それでも顔は赤いままだったけれど、

   恥ずかしそうにポツリとこう呟いた。


   「今度するときはちゃんと予告してね。」












   そんなを見て、

   こんなかわいいが見れるなら

   また突然やってみようとか、

   リョーマが考えていることを










   は知らずにいた。


















  end
   ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
   
   初めての越前夢。

   書きたいことがいっぱいあって

   詰め込みすぎちゃいました。(´Å`;)

   どうなんでしょうか・・・これ。

   ちゃんと越前っぽくなってるのかなぁ(汗)

   不安だ〜(@△@)゛


   ま、そんなわけで貰ってくださいな。