* オイワイ *
「手に入れてェ女がいる」
それを・・・
あたしに言うってことは、
あたし以外の女ってことなのね?
・・・はぁ。
あんたが好きって気付いて、
少しでも近づきたくて
話し掛けたのが間違いだった。
もう少しくらい恋する女の子させてくれてもいいじゃない。
気付いた途端失恋。
突然すぎて涙も出ない。
「へぇ、ゾロでもそんなこと思う人がいるんだね」
以外と普通の言葉が言えた。
けど、もう離れたい。
ゾロと一緒に居たくない。
いたらきっと、酷い言葉を浴びせてしまうから。
「なんかいが〜い」
なんとも思ってないわよ
ゾロに好きな人がいたって
そう思わせるようにケラケラと笑ってみせた。
「うるせェ」
ぶっきらぼうに言うとあたしの頭を小突く。
照れ隠し。
こういうとこ、ほんとかわいいと思う。
いつも眉間にシワが寄ってるような怖い顔をしてても、
ほんとは優しいってとこと。
気にしてない様に見えて、ほんとは仲間思いのとこ。
まだここのクルーになったばかりの時は彼がこんな人とは知らず、
近寄りがたくて、怖かった。
けど・・・、知ってしまったから。
ゾロの良いところ、以外なところ、知ってしまったから。
その時から、恋に発展するのに時間は掛からなかった。
けど、
もう終わり・・・。
見苦しくいつまでも好きでいても仕方がない。
意思が固いゾロのことだ。
ちょっとやそっとのことで気持ちが変わるような男には思えない。
・・・あたしが折れるしか、ないじゃない。
「?」
「・・・・・・」
「どうした?」
「・・・・・・・・・」
「お、」
「ゾロっ!!あたしちょっとサンジ君とこ行ってくる!!」
急にあたしが大きな声を出したから、ゾロが驚いたように一瞬目を見開いた。
あたしはゾロの顔も見ずに立ち上がって、スタスタとキッチンに向かう。
「・・・、誰だか気になんねぇのか?」
ゾロが前を向いたまま、あたしに問い掛けた。
・・・・気になる。
気になりすぎて頭が変になるくらい。
けど、知ったところでどうなるわけでもない。
あたしの気持ちが収まるわけでも、ゾロの気持ちが変わるわけでもないのだから。
「ゾロがその子と両思いになったら教えてっ」
そのときはお祝いしてあげる。
なんて偉そうに笑いながら、自分の気持ちを押し隠す。
そんな日なんて来なければいい。
こんな真っ黒なあたしの心をゾロには知られたくない。
「サンジ君、なんか手伝ー・・・」
キッチンに一歩足を踏み出した、その時、
思いっきり腕が後に引っ張られる感覚。
突然のことで声も出ず、後に顔を向ければゾロがいて、ますます訳が分からなくて。
「まださっきの話が終わってねェ」
「え?ちょっと、ゾロ!?」
初めてに等しい、ゾロに触れられる感覚に胸が悔しい程高鳴って、
ゾロにこんなにも触れたかったのか、触れられたかったのかと
ゾロがこんなにも好きだったのかと再確認させられて。
それと同時にゾロが好きな女のことも頭に浮かんできて、
なぜだかあたしの目からは、涙が溢れてきた。
「何泣いてんだよ」
「やっ、・・・離してっ・・・」
ゾロに引きずられるように歩きながら、あたしはゾロから逃れようとするように身体を捩る。
ゾロは前を向いたまま。
なんであたしが泣いてるのが分かったの?
そのままゾロはさっきまで話をしていた場所まで行くとドカっと腰を下ろした。
あたしとゾロの手は繋がったままで、自然とゾロと向かい合わせの形で座って。
泣き顔を隠すようにあたしは頭を垂れて、ゾロは真っ直ぐあたしを見る。
ずっと見てくれなかったじゃない。
あたしのこと。
いつもいつもゾロはどこか向いて、さっき話してたときだって。
話してるとき目を合わせてくれないのって結構キツイのよ?
なのに、それなのに、なんで今更?
そんな目で見ないで。
溢れちゃうから。
ゾロがすきだっていう気持ちが、思いが、止まらなくなる。
あたしのちっぽけな心臓一個じゃ小さすぎるの。
溢れ出して、もう抱えきれなくなるから。
「いつになったら泣き止むんだよ?」
「・・・・。」
そんなことあたしにだって分からない。
「こっち向けって」
ゾロはあたしの頭に大きな手をポスっとのせる。
その重さと暖かさに、あたしの目からはまた大粒の涙が零れてきて。
「すき・・・」
この溢れ出す、ゾロへの想い。
そのまま流れてしまうのは勿体無くて。
一滴一滴が、あたしの大切な一部。
そのまま放っといて、いつか尽きてしまうのだったら。
今ここであなたにぶつけてしまおう。
溢れ出した想いも、全てすくって。
「すきなの・・・。ゾロが・・・」
見苦しくたって構わない。
もう、そんな理性なんて働かない。
あたしの中は今、ゾロへの想いでいっぱいなの。
「・・祝い・・・・」
「へ?」
あたしは少し顔を上げてゾロを見た。
ゾロはあたしを見て、ニヤっと笑う。
「してもらおうじゃねェか?」
きょとんとするあたしに、ゾロは息が混ざり合うくらい顔を近づけて
「両思いになったらお祝いしてあげる・・・・だろ?」
そう言うと、一気に間合いを詰めた。
「んっ・・・・」
いつの間にか涙は止まって、
溢れてくるのはゾロを愛しいと思う気持ち。
ゾロとの初めてのキス。
それは、あたしにとっても最高のお祝いー・・・・
END
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あっさりしすぎちゃったかしら?
またいずれ書き直すやもしれません。