「おい、」
「あれ、ゾロ起きたのぉ?」
「・・・ああ」
「なぁにー?」
「こっち向けって」
「んー。ちょと待って」
「待てねぇ」
「待ってってば・・・わっ!」
せっかく塗ったマニキュアが・・・・
思考はそこまで。
後はゾロとの行為に脳が酔いしれる。
***悪夢***
ゾロは噛み付くようなキスを。
それに精一杯答えようとするを麻痺させるように、激しく、感情に任せて存在確認のように愛を貪る。
くらくらする頭。
じんわりと熱が帯びる体。
「ぞ・・・ろぉ・・・」
「あ?」
唇は触れ合うか否かのギリギリのところで止まっていて、お互いの高ぶった吐息と視線が交差する。
痺れた唇で、は続ける。
「・・・ぉしたの・・・・?いきなり・・・」
さっきまで大人しく寝てたのに。
どんなに怒鳴っても殴っても起きないときもあれば、
今日のように気配を感じぬまま、いつのまにか起きている時もある。
「別に・・・なんとなくだ」
嘘っぽいな。なんとなくだが、そう感じた。
「ゾロ・・・」
「・・・・・」
「怖い夢でも、見たの?」
目の前の男の顔を覗き込むように、首を少しだけ傾げて、
それは小さな我が子に言うような母親のようで、バカにしている雰囲気は微塵にもなかった。
「バカか・・・」
少しだけ目を見開いて、でもすぐに細く鋭くなって、
そして呆れたように笑う。
それでもゾロの腕はから離れない。
「怖くなったの?」
「怖いもんなんかねぇ」
「・・・・嘘つき」
「ねぇよ。実際」
「・・・そっか・・・」
大の大人の男の、その瞳は、
少年のような、なにか大きな野望とか、口に出してしまったら安っぽくなるような、
そんなものを秘めてる、輝いた色をしている。
がむしゃらで、怖いもの知らずで、己の信ずる道をひたすら走っていくような。
ああ・・・それでも、彼は恐れるものを見つけてしまったんだ。
きっと・・・・。
きっと。・・・そうなんでしょ?
もし、アナタの恐れるものが私の考えたソレであるなら・・・
私はなんて倖せもの。
「ねぇ・・・ゾロ」
柔らかで、温かいの白い手が、ゾロの頭を優しく撫でる。
そのまま手はゾロの頬にすべり降りる。
ゾロはの瞳を見つめたまま、視線は決して泳がない。
「私はいなくなったりなんかしないよ?」
ずっと、ゾロの側にいるから。
ゾロの隣で眠りについて、ゾロの隣で朝を迎えて。
一緒に悩んで、笑って、泣いて、抱きしめあって、愛し合って。
ずっとずっと。
愛しいあなたの側にいる。
優しい表情に、その言葉にゾロは驚いたようにを見つめる。
他人からしてみれば分かりづらいが、には分かっている。
彼が、隠してきたことを、言い当てられてしまった、そんな表情をしていることを。
「怖がらないで」
優しく、の細い腕がゾロを包み込む。
「大丈夫。大丈夫・・・」
ゾロの耳元で、聞こえるその居心地のいい声は、まるで子守唄のようだと、
頭の隅っこでゾロはそんなことを考えた。
「敵わねぇ・・・お前には」
にもたれ掛かる様に、ゾロは少し体重をに傾ける。
それをしっかり支えながら、は目の前の愛する人に囁き続ける。
悪夢は所詮夢で、でもその夢は必ずしも夢のままというわけでもなくて。
日々地球は回って、お前もおれも、今まで生きてきたんだ。
生まれたからには死ぬし、おれはそれを恐れてはいないし、以外と受け入れてたりする。
自分の死より、失うことのほうが怖い。
やな夢見て、真っ先にお前の後姿を確認して、
そしたらキスしたくなって。
安心したんだよ。
おれの側にお前がいてくれたことが。
おれを安心させた。
急に愛しくて、に触れないと自分が壊れてく気がした。
人を心から愛して、おれは相当弱くなっちまったらしい。
情けねぇな・・・・。
でも、
悪い気は、しねぇ。
*** fin ***
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