* spring agein spring 後半 *
辺りは静寂に包まれていた。
広がるのは、満点の星空。
さっきまで飲んで、唄って、騒ぎまくっていた海賊たちは
甲板でそのまま寝てしまっている。
エースの膝の上にも、スウスウと小さな寝息をたてている少女が一人。
当のエースは、お酒を飲みながら、一人空を見ていた。
空を見ながら、30分ほど前に起こったことを思い返していた。
必死な目をして、自分に思いを告げてきた、この少女。
そして、おれの話を聞いた後の笑顔―――・・・。
と、その時、人の気配がした。
誰なのかは、エースにはすぐに分かっていた。
「ロロノアくんかい」
「何で、じゃいけねェ?」
率直な質問に、エースは苦笑を浮かべる。
「・・・盗み聞きはいけねェなぁ」
帽子を被り直しながら、茶化すように言うエースに比べ、
「質問に答えろ」
ゾロは今にも刀を抜きそうな、殺気を帯びている。
「盗み聞きしてたなら、分かってるはずだぜ」
それでも余裕を含める話し方のエースに、ゾロの苛立ちは募っていく。
「納得いかねェ」
エースは静かに苦笑する。
コイツは自分の気持ちに、気付いてんのかねェ。
自分の膝で静かに眠るを、エースは見詰める。
「おれは、がいけねェなんて思っちゃいねェさ。
人懐っこいし、他人に対して思いやりもある。
何より美人だしな。・・・・ただよ、」
そこで、から視線を外す。
「アイツじゃなきゃいけねェんだ」
その言葉に、ゾロの殺気が消えていく。
もうどうにもならない。
の想いは、多分もう、エースの想いと結びつくことはないだろう。
分かってはいても納得できない。
どうして、コイツじゃないのか。
ただ、心のどこかで安堵している自分がいることに、
ゾロ自信はまだ気付いていなかった。
「ん・・・、ぅん・・・」
まだ、・・・眠い。
う〜〜、眩しいなぁ。もう朝・・・?
その光が急に遮られる。
不思議に思って、目を開けると、
「やっと起きたな、寝ぼすけ」
目の前には呆れ顔のエース。
「っうわあ!なんで・・・って、ぇえ!?」
自分がエースの膝で寝ていたことに気付いて、慌てて身体を起こす。
「ど、どかしても良かったのに・・・」
「よく寝てたからよ。お陰で足が死にそうに痛ェ」
それを聞いて慌ててチョッパーを呼びに行こうとするを
「うそだ、うそ」と、笑って引き止める。
そして、急に
「もうおれ行くわ」
と、一言。
「えっ!もう?・・・じゃあルフィたち起こしてくる!」
「いいさいいさ。また会える。寝かしといてやれ」
そう言って、の腕を掴む。
まだ、ドキドキする。
まだ、しつこいくらい、私はエースが好きなんだ。
「エース・・・」
「ん?」
「・・・・・・」
最後に・・・、最後に・・・っ
「・・・あの、ぅわ!」
喋りかけたの頭をぐしゃぐしゃーってして、
エースは笑った。
そして、急に遠くに話しかける。
「おいっ。、頼んだからなっ!」
「え・・・」
「」
の声が遮られて。
「・・・イイ女になったな」
そう言って笑って、
エースは行ってしまった。
エースの背中が見えなくなるまで、
小さく、小さくなるまで、はエースの姿を見詰めていた。
気付くと、隣にはゾロが立っていて、
流していた涙は、なぜか止まっていた。
「おい」
「ん?」
「・・・なんでもねェ」
「なにそれ」
エースが、私を頼むと言った相手は、
このクルーたち全員のことか、はたまた一人限定かは分からない。
ただ、いつも最後まで寝ているゾロだけが、なぜか今日は起きていたことは事実で、
その言葉を聞いていたのはゾロ一人だけというのも、事実だった。
あともう一つ。
確信が持てないこと。
それは・・・・
「あのとき・・・」
「あ?」
「・・・なんでもない」
「なんだそれ」
「ぃよっし!ルフィたち起こしにいくよっ」
背伸びをしながら歩き出すの横顔が、
なぜだか何時もと違ったように見えて、
ふと、ゾロはさっきのエースの言葉を思い浮かべた。
『・・・イイ女になったな』
「・・・・確かにな」
「ん?なんか言った?」
「いや、なんでもねェ」
「なんかさっきから私たちソレばっか」
そう言ってはおかしそうに笑った。
あともう一つ。
私が確信を持てないこと。
それは・・・・
『・・・イイ女になったな』
あのときのエースの笑顔が、少し寂しそうに見えたのは、
私の気のせいだったのだろうか?

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エースのお相手は『 Prisoner』の元女海軍さんです。