オレンジのテンガロンハットと
左右にはねたクセっ毛。
そして豪快な笑顔と、
人を見透かしてるような、それでいて人懐っこい瞳
あの人が、やって来た。
私の、好きな人・・・。
* spring agein spring *
「サンジぃ〜!肉だ肉ぅ〜〜!!」
「まぁだ食うのかよ。てめェのせいでナミさんたちの分がなくなっちまったじゃねェかよ!」
「ん〜〜、だって今日は特別なんだぜ〜?こーゆーときは食わなきゃな!肉っ!」
そう。
今日は特別。
少なくともあたしにとっては。
だって、今日は・・・
「おい。そこの酒取ってくれねェ?」
「あ、うんっ。」
うちのクルーの一人。
緑頭の剣豪さんに、急に声を掛けられ、傍にあった酒瓶に手を伸ばす。
「何ボーっとしてんだよ?」
「いや、別に。てか、ゾロも何時にもなく口数少なくない?」
「ルフィの兄貴が来る日は、アイツが何時にも増して五月蝿ェからだろ?」
「ふふっ。ルフィ喜んじゃってかわいいよねぇ、ほんと」
その微笑ましい光景に、は笑みを隠し切れず微笑む。
「・・・・・」
「・・・?何よ。あたしになんか付いてる?」
「いや、喜んでんのはルフィだけじゃねェ気がするんだけどな」
「っは!?」
ゾロは何気に人のことを見てる。
そう思うときがある。
いつもトレーニングばっかで、我関せずな雰囲気漂わす割には
なんか鋭いのよ。
ってか、ここで顔を赤くさせちゃう私が分かり易いのかも・・・。
ぁああっ、でも早いわよね?
まだ私の気持ちバレてる訳じゃないもの!
「エースが、好きなんだろ?」
「っっ!!?」
バレてたっ!!!!!
「何ヲオッシャル、ロロノアサン」
「なにカタコトになってんだよ」
「あ、や・・・」
「どうなんだよ?」
「はいっ?」
「アイツのことは」
心なしか楽しそうなゾロの目を逸らしながら、はなんとか言葉を発している状態だ。
「べ、別にす、好きなんて、ことは・・・」
「じゃ嫌いなのか?」
「・・・そっ、そんな」
「ハッキリしろよ」
「〜〜〜っ」
「おいおい、ロロノアくん。女の子を、あんま苛めちゃいけねェなぁ」
その声はの真後から聞こえてきた。
その声の本人は、さっきまで弟とじゃれ合ってたはずの・・・
「エース!」
の顔が先ほどよりも更に桃色に色づく。
それを見て、ゾロが面白くなさそうにエースを睨む。
「おおう、怖いねぇ。そんなに睨むなって。お楽しみを邪魔しちまったかい?」
エースはニヤリと笑うとの隣にドカっと座る。
「隣いいかい?」
座ってから聞かれても、とは笑いながら頷く。
そのの笑顔を見て、ゾロは静かに立ち上がる。
「あっ、ゾロ・・」
「飲みすぎた。用たしてくる」
気をきかせてくれたのだろうか?
だとしたらゾロに感謝だ。
だって今日は、エースに自分の気持ちを打ち明けようと
決心をしていたからだ。
エースはたまにうちの海賊船に寄るが、それは本当にたまにのことなので
今日という日を逃したら、また再び会えるのはいつになるか分からない。
自分はエースより4つも年下で、女扱いなんかされてないかもしれない。
ってか、されてない。
でも、だからこそ、女として意識してもらう為にも
早めに打ち明けたほうがいいと思ったのだ。
お酒の力も借りて、今日はスパッと言ってしまおう。
「エース!今夜はパァア〜っと飲むわよ!!」
そう言うが早いが、酒瓶にそのまま口をつけ一気飲み。
「ってお前、酒そんなに飲めたっけ?」
「へ?こんくらいへっちゃらよぅ!」
「・・・酔ってません?」
「酔ってません!!」
そう元気よく言うと、エースのコップにも酒を注いだ。
「おっとっと」
「んふふ〜」
コトっと瓶を脇に置き、エースの肩に無造作に頭をおく。
「どうした?」
エースがこちらを見た気配がした。
「・・・・・」
「?」
エースが、この船で名前を呼び捨てで呼ぶのは、
ルフィ以外で私だけで、
少なからず、私はそのことが嬉しくて、こそばゆくて。
けど、それと同時に、「さん」付けで呼ばれてるナミとロビンが羨ましかった。
彼女たちは「女の人」扱いされてる気がして。
自分は、ルフィと同じ、妹みたいな存在でしかないような気がして。
エースに、頭をぐしゃぐしゃ〜ってされるのとか、
嬉しくて嬉しくて、でも切なくて。
だってやっぱ、ソレもルフィにしかしないことだし。
「・・・・とぉーい」
「あ?」
「遠いよねぇ。やっぱぁ」
「何がだ?」
エースが片方の眉毛を上げて聞き返すが、は答えず、
「でも、それでも、・・・だからこそ」
消え入りそうな声で、それでも肩に頭を乗せてるおかげで
声はエースにしっかりと届いていた。
「・・・・」
「・・・・」
「近づきたい。エースに」
急にはっきりとした声で。
エースがの方を見る。
それを見計らって、が距離を詰める。
触れる、唇。
そしてすぐに離れて、
はエースの顔をジッと見つめる。
怖くない。
もう、怖がらない。
「・・・酔ってるのか?」
「・・・・かもね」
「大人をからかっちゃいけねェ、」
「・・・・からかってるように、見える?」
「・・・・・」
そこでエースは溜息をつく。
「何で、おれだ?」
「理由なんているの?」
の声が震えた。
「いや、いらねェな・・・。さっきのも、悪かった。」
そう言って、唇をかみ締めて、涙を溜めているの頭を撫でる。
「からかってるわけ、ねェよな。」
涙が、零れた。
好き。
私は、この人が本当に好きだ。
「おれぁさ、今、好きなヤツがいてよ。」
俯いて泣きじゃくるの頭を撫でながら、エースが口を開く。
「ソイツが、またどうも素直じゃなくてよ、
言葉はいつもキツイし、何かとすぐ手ぇ出るし。
キれた後宥めるのも楽じゃねェ」
そう言って大袈裟に溜息をつく。
そして、エースが喋るより早く、が口を開いた。
「でも、」
ゆっくりと、が顔を上げる。
「愛、してるんでしょう?」
涙が一滴、頬を伝う。
の髪からエースの手が離れた。
「ああ」
エースの目をしっかりと見て、は微笑んだ。

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長くなったので前後半にしました。
結婚するなら私は兄貴とがいいです。(何