* 卒業 後編 *
受験は――――合格。
子供のように泣きじゃくる私を、
ルフィはきらきらしたその笑顔で迎えてくれた。
ルフィ・・・・
ルフィ・・・・ッ
ルフィ・・・・!!
一緒にいたい。
一緒にいたい。
離れたくないよ・・・。
出会ってから今まで、ふざけて抱き合うことはあっても
恋人たちが放つようなそういうムードではなく
キスなどという行為も私たちの間にはなかった。
そういう雰囲気にならなかったというより・・・
私は、避けていた。
怖かった。
ただ怖かったんだ。
もうすぐ離れてしまうという事実が。
こんなにもルフィに依存している自分が。
愛しいという気持ちがイタイほど、怖いほどあって。
そしてそれは、離れてしまう恐怖をも、この胸を支配していく結果になった。
必死だった。
どうすれば自分が1番傷つかないかを、
ツライ想いをしないですむ道をいく為 に、必死だったんだ。
そんな私の精一杯の小さな虚勢が、ルフィの気持ちを傷つけているとは知らずに・・・。
卒業前夜。
私とルフィは、あの湖にいた。
今回はバカ話も、石飛ばしもしないで。
ただ黙って、座り込んで、空を見上げていた。
そうしてるだけで、溢れてくる愛しさと、切なさが
じわりじわりと、脳内を支配していく。
気持ちの、逃げ場がない。
言いたいコト、伝えたいコトバ。
山ほどあるくせに。
頭ん中渦巻いてるこせに。
言えなくて。
触れそうで、全く触れていない、そんな距離。
「もう、帰ろうか。寒いし、明日の準備もあるし・・・」
口から出たのは普通の言葉。
ごく普通の・・・・
その時、立ち上がろうとする私の腕をルフィの手が掴んで。
もうそれだけで、
なんでだろう?
涙が、溢れた。
「ル・・・」
「黙って聞け」
「・・・・・」
「・・・もう、1週間、1ヶ月経っても、あの校舎にはいねぇだろ?
おれは、それがいやだ。
・・・寂しいって、こんな感じなんだなぁ・とか、・・・思った」
「―――・・・っ」
「おれはに会いてェ。明後日も、1週間後も、ずっと。
一緒にいてェんだ。と。
だからよ、さよならはしねェ」
「ルフィ・・・」
「ん?」
「・・・あ、あたしだって・・・、ルフィのっ、そのっ、
ばかみたいな笑顔がないと・・・」
「ひでェ言われよーだな」
ルフィは静かに苦笑して。
「いいから黙って聞いてっ」
私は涙でぐしゃぐしゃで。
「寂しい・・・の。これからも、見ていたいっ。
ルフィと、一緒に・・・いたいのっ!」
思った以上に自分の声が大きく響いて、言った本人が1番驚いて。
ルフィを見ると、その顔はいつもの――・・・
「しししっ」
ああ もうっ。
愛しいヤツ!
この高校生活。
喜びも、悲しみも、
たくさんたくさん詰まった、この3年間。
今日は、その3年間に終止符を打った日―――・・・。
「ル〜フィっ」
「っ!」
「もういいのか?写真とか撮んじゃねェの?」
「今夜またクラスで集まるから、早めに切り上げてきちゃった」
「そっか」
そう言って、ルフィがまた嬉しそうに笑う。
「ぃよっし!!」
その直後、勢いよくルフィは立ち上がると、
「キスしようぜっ!!!」
「・・・はぁっ!?」
あまりにも突然に、しかもでかい声に私はただ呆気にとられて。
「いいじゃねェか。もう待てねェからな!」
そう言って、
「えっ、わっ!」
私の腰に手を回して、引き寄せた。
ある意味これも、一つの卒業・・・、かな?
END

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オチがありきたりでごめんなさい(汗)