この高校生活。

          喜びも、悲しみも、

          たくさんたくさん詰まった、この3年間。



          今日は、その3年間に終止符を打つ日―――・・・。


















          * 卒業 前編 *


















          私たちが、初めて言葉を交わした日のことを

          あいつは覚えているだろうか。





          高校3年の初夏。

          綺麗なピンク色した桜の木々は、

          すっかり青々とした爽やかな色に染まっていた。

          空は真っ青で、風は心地良くて。

          そんな日の、放課後だった。



          参考書と教科書、そしてノートを両手に抱えながら、私は質問の為、

          あいつは、授業中に居眠りした上、寝ぼけて、叱り付ける先生に"めつぶし"したため、

          数学準備室に、居た。

          あいつがこっぴどく叱られているのを、私はウンザリしながら、まだかまだかと待っていた。


          丁度その時、鳴り響いた校内放送。

          数名の教師の名前を言い終えた後、「ブツッ」とマイクを切る音。

          先生は「おれか・・・」などと呟いて、席を立つ。

          冗談じゃないとばかりに、私は先生の行く手を阻んだ。


          「先生っ。私教えて欲しいところがあるんですけどっ!」

          「ああ、悪いな、すぐ終わるからちょいと待っとれ」

          私を見てそう言うと、すぐさま目線はあいつに戻り、

          「ルフィ!!話は終わってないからな!!まだ帰るんじゃないぞっ!!」

          そう一睨みして、この部屋から出て行った。



          ・・・・ルフィ・・・?








          数学準備室に、私と・・・ルフィ。



          二人きり。








          「・・・・・。」

          「・・・・・。」



          「あんた・・・」

          「んあ?」

          「一体なにしたのよ?あの先生に」

          「・・・別に、授業中居眠りしてた」

          「だけじゃ、ないわよね?こんなに説教が長引いてんだから。」

          「・・・うるせェ。お前に関係ねェだろ?」

          「っ関係あるもないも!!私ずっと待ってたのよ?時間がないってのにっ!」

          「・・・もしかしてっ!お前もやったのか!?めつぶし!!」

          「なんの話よ!!つか、あんた先生にめつぶししたの!?信じらんないっ!!」

          「じゃぁお前は何やらかしたんだよ?」

          「なんもやってないわよ!!!」

          「お前声でけェなぁー」

          「誰がそうさせてんのっ!!」


           




          私は何十分も待たされて、ルフィは何十分も説教されて、



          これが、ロマンチックの欠片もない、私とルフィらしい           

          



          そんな二人の"始まり"だった・・・。   






























          1歳という、この距離。

          少なくとも私には物凄く遠く感じられて。

          どうして私はルフィと同じ年じゃ・・・なんて、どうしようもない幼稚なことを考えていて





          繰り返し繰り返し、

          喉まで出かける弱気なコトバ。

          私とルフィのこと、受験のこと。



          出かけては飲み込むそのコトバ。

          捌け口はなく、でもツライとは思わなかった。



          だって、ルフィが笑ってたから。














          今思えば、ルフィはそんな私のことを全部見抜いていたのかもしれない。

          ルフィは天真爛漫でどこか無神経なのに、妙に鋭いとこがあるから。





          実際、受験生という立場、親の期待に苛ついて、不安で、何もかもイヤになったとき

          なぜかルフィはいつも私の隣にいた、



          ・・・・気がする。




          普段はルフィなりに受験生の私に気を使って、

          会う約束もしてこなかったけど



          どうしてだろう?

          ルフィには、私が泣きたくなる時が分かるのだろうか?



          そんな有り得ないことを思ってしまうほど、

          ルフィは「タイミング」が良かった。












          いつだったか、夜中に急に呼び出されて、

          屋台のラーメン食べに連れて行かれたり、

          近くの湖に自転車二人乗りして行って

          ばか話しながら石飛ばししたり・・・。





          ほんの少しの時間。

          1時間も経ってなかったんじゃないかな?

          それでも、凄くオモイ・・・っていうか、大切っていうか

          その1時間がとてもとても濃くて、嬉しくて。



          逃げ、ではなくて。

          ルフィは、私にとってたった一つの休息だった。












          ルフィは分かっているのだろうか。

          こんなにもルフィの行動一つで、笑顔一つで、私が救われてるってこと。

          ルフィが傍に居てくれるだけで、泣きたくなるほど






          泣きたくなるほど・・・・
























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          とりあえず前半終わり。

          ツライ時のルフィの笑顔はホットココア以上の元気を与えてくれますvv