* 登下校 *
そこの角を左に曲がって、2、30メートルの坂を上る。
上りきる前にイマドキ古い、トタン屋根が見えて。
そうするといつもアイツが・・・・
あっ、いたいた。
「ル〜〜フィ!おはようっ!」
「おう!っ!」
初夏の太陽みたいに初々しくて眩しい、いつもの笑顔。
私とルフィは背丈が今の膝小僧くらいしかない時からずっと一緒にいて、
言わば幼馴染ってヤツで。
幼稚園から今のグランドライン高校までずっと一緒。
ルフィとは、ほんとのキョウダイみたいに育ってきたんだ。
「ねぇ、ちゃんと今日の化学のプリントやって来た?」
「ん〜。化学なんておれの進路に関係ねェ」
「・・・・・・・」
ほんと、こんなんでよくこの高校に受かったなぁ。
まぁ、やる時はやる男なのよ。
コイツって、ほんと何かと凄い力もってるのよね。
「じゃあ私の見る?」
「おっ!?マジでっ!?ありがとぉ〜〜〜っ、!」
毎回コイツがやらない課題は私が見せてあげてるんだけど、
それが当たり前って考えてないから、こんなに感謝してくれてるわけで。
そぅいうとこが、やっぱルフィだなぁ〜って思う。
二人とも運動部で、行きも帰りも大体二人一緒。
ルフィとは、お互い恋愛関係ではないんだけど、
それでも、一緒に居て1番居心地の良い存在。
少なくとも私はそう思ってる。
何よりルフィと居ると楽しいし、やっぱ飽きない。
ここまで一緒に居るのに、喧嘩したこともなくて、離れたいとも思ったことはない。
それはやっぱりルフィだからで、他の誰かだったらこんな関係は続かなかったと思う。
これからもずっと、こんな私たちでいたいな。
当たり前のような、ささやかな願い。
でも、そんな私の密かな願いは、
本当にちょっとした、些細なコトで無惨にも粉々に、
崩れてしまったんだ。
「あ、おれお前のこと好きだから」
一瞬の間。
「・・・・はい?」
部活動は休みで、なのに今日は運悪く委員会があって。
早く終わってくれないかなぁ〜と思いながら眠りについてしまった私を起こすのには、
十分すぎる急なオコトバ。
間抜け面で見上げれば、無愛想な表情に緑色の髪の毛。
同じ委員会というだけで、今までまともに話したこともない相手からの、突然の告白。
「好きなヤツいねェなら、おれと付き合え」
・・・・命令形ですか。
「あのぉ、今委員会中ですけど?」
「ンなもんとっくに終わった」
「え、うそ・・・っ」
辺りを見渡せばガランとした教室に、二人きり。
「ぇえ!いつから私寝てたのっ!?」
「委員会始まった時から」
最初からじゃん・・・。
「・・・・・・・気付いてたなら、起こして下さいよ」
「いや、なんか起こすの勿体ねェと思って」
「・・・・・・」
「照れんなって」
「て、照れてませんっ!」
なんなんだ、この人っ!
「とにかく、ごめんなさい!私、あの」
「好きなヤツとかいんのかよ?」
「いないけど・・・」
「じゃぁいいじゃねェか」
ぅわお!しまった!!
ウソでもいるって言っとくんだった!
「絶対おれのこと好きになるって、お前」
「・・・・・・・ならなかったら?」
「ンなことは考えねェ」
・・・さいですか。
でも、
どうしよう。
凄くドキドキしてる・・・・。
「・・・・・・決まりだな」
「えっ!?」
「これからはゾロって呼べ」
「ちょっ、なに」
「」
ドッキン!!
「って呼ぶから」
顔が、熱い・・・・・。
なに?
コイツの目、見てると・・・・
逆らえない、気がする。
「う、ん・・・・」
急過ぎて、訳の分からないこの展開。
混乱しながらも頷いた私に、ゾロから無愛想な表情が一瞬消えて、
少しだけ笑った気がした。
ホッとしたような、そんな顔で。
そんな顔されると、
私、ホントに・・・・・・・・
「・・・・」
また名前を呼ばれて、体が少しビクつく。
怖いって訳じゃないのに、意識し過ぎて・・・。
「一緒に帰らねぇ?」
「へっ、あ・・・・」
「送ってってやるし」
そう言ってポケットから原付きの鍵を取り出して、私の目の前に出してプラプラと揺らす。
「えっ、免許持ってるのっ?」
ってゆうかそれ以前に校則違反なんですけどっ!
「学校の近くの牛小屋んとこ停めてある。見つかんねェから安心しろって」
この時私は、帰りにゲーセン行こうというルフィとの約束を、スッカリ忘れてて。
目の前のこの人のことで、頭がいっぱいだった。
小さなヒビが、入ったことも知らずに・・・・・。

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彼氏が出来ても友達とのすっぽかしは厳禁ですよ!
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