別に、を困らせたかった訳じゃない。
でも、軽く「私もそうだよっ」って言ってもらいたい訳でもない。
幼馴染とか、そういうの無しにして、考えてほしかったから・・・・。
* 登下校 - D - *
「はぁああ〜〜〜」
「・・・・・・・・」
「はぁああ〜〜〜」
「うるせェなぁ、さっきから。メシが不味くなるだろぉが」
「はあぁああああ〜〜」
「喧嘩うってんのか?」
ソファに寝そべって、うなだれるルフィの頭を軽くこずくと、
エースはのしっとルフィの背中の上に腰を下ろす。
「うげっ」
呻いてはみせるものの、その後は黙ったままだ。
弟のこんな姿は滅多にあるもんじゃない。
「どうした、ルフィ。となんかあったのか?」
勘がいいエースにズバリと言い当てられ、ルフィはピクリと反応する。
ゆっくりと腰を上げて、床にそのまま胡坐をかいてエースはルフィの言葉を待つ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「なんでもねェ」
帰ってきた言葉にブハっと吹き出すと、エースは伸びをしながら立ち上がった。
「そーかい。ま、いいわ。言いたくなったら、何でも言えな」
そう言って二階に上がって行ってしまった。
我ながら、言い兄貴を持った。
そう思いながらも、心は晴れない。
本当に言って良かったのか。
あのときのの顔。
絶対困ってた。
おれは、小さい頃からと一緒に居て、キョウダイみたいに育ってきた。
でも、いつからだっけか。
中学に上がって、を好きだとかいうヤツが現れだして、
も、それなりに恋とかしだして。
そういう話をすると、おれが不機嫌になるから、段々しなくなっていって。
アイツは、おれの不機嫌の理由が、ただの子供じみた嫉妬だと思ってて。
・・・・・実際そうなんだけどよ、でも少し違うんだ。
遊び相手が取られるとか、そういうガキみてェなき持ちじゃねェんだよ。
が、他の男に取られるのが、イヤなんだ。
・・・・・・・・やっぱガキか?
「〜。あんたケータイ鳴ってるよっ」
「え?あ、取って!ソファんとこにあるから」
ガシガシとタオルで濡れた髪を拭きながら、ドタドタと居間に走る。
はい。と渡されたケータイに表示されているのは、ゾロの名前。
なんとなく、一瞬取るのを躊躇った。
「なにしてんの、切れるわよ?」
「わ、分かってるよ!」
相手が気になるのか、そこから離れない母を軽く睨むと、
は自分の部屋へと走った。
「もしも」
「遅ェ」
「ぅわっ、ごめんなさい!」
勢いよく謝ると、ゾロが少し笑った気配がした。
「今出れるか?」
「いっ、今っ?」
「無理ならいいんだけどよ、丁度バイト帰りで、お前んちの近く通ったし」
「あっ、待って、行くっ。どこらへんにいる?」
電話を切ると、パジャマ代わりのTシャツと短パンで玄関へと急ぐ。
「ちょっとコンビニ行ってくる!」
そう言って靴の踵を踏んで外へと飛び出すと、
すぐ前には原付きに乗ったゾロが既に居て。
「ビックリしたぁ!なに、待っててくれて良かったのに」
トントンと踵までしっかりと靴を履きながら、ゾロに近づく。
「おれは気が短ェんだよ」
そっぽ向いて言ったゾロを見上げて、はゾロにばれないように笑った。
時間があるから散歩をしよう ということで、のんびりと住宅街に沿って歩いていると、
ゾロが呆れたような顔で視線をこっちに向ける。
「つかよ、お前なんだその格好」
「気が短い誰かさんのせいで着替える暇がなかったの!」
「へぇ、はそんなにおれに早く会いたかったのか」
「な、違うし!」
顔を真っ赤にして言うセリフには説得力はなく、ゾロは可笑しそうに笑った。
反対には頬を膨らませて、怒ったような顔をする。
でも、ゾロの言ってることは本当のことだし、
ゾロのそういう自信過剰なとこも、好きだと思ってしまう。
会いたかった。
なぜだか、強くそう思ってしまった。
そう思う片隅で、少しだけ、胸がチクリと痛んだ。
それが何の痛みなのか、
はまだ気付かない。
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兄貴を意味なく出すのがすき。
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