* 登下校 - F - *
ガチャリ
「あらー、帰ったのぉー?」
とたとたとた・・・
「夕飯もう出来てるわよっ」
たんたんたんっ
「っ」
「いらない!」
バタン!
階段を上がり、自分の部屋に入り、はそのままベットにダイブする。
無意識に左の頬に触れると、少し熱を持って腫れていた。
これは今日、部活の顧問に叩かれたもので、
そのことについてはは当然の報いだと思っているし、気には止めていない。
ただ、あのメール。
ルフィからのメール。
そのせいで部活には集中できず、今も気分は重い。
『おれ、もうと帰ったりすんのやめるわ』
未だに返信は出来ずにいる。
+++++++++++
「・・・・・・・・」
「・・・・・・おい」
「・・・・・・・・」
「・・・・・おーい」
「・・・・・・・・」
「・・・・おい、ルフィ!」
「っぅわぁあ!!?なっ、なんだよ、ウソップ!」
大袈裟すぎるルフィの声に顔をしかめるウソップ。
「コッチの台詞だっつーの!ここおれン家なんだぜ?さっきから黙りこくってなに携帯ガン見してんだよぉ!」
「あ?あぁ、ここお前ん家だったっけ」
「忘れんなって」
「いやぁ、すっかり長居しちまって、こりゃ失礼」
「気持ち悪ぃなぁ。なに言ってんだよ。一人になりたくないからおれン家来たんじゃねぇのか?」
溜め息と混じって、ウソップの声は語尾が掠れた。
腰を浮かしかけたルフィは、黙ってまた腰を落としてあぐらをかく。
「なんだかな。落ち着かなくてよ」
「落ち着いてるお前なんて見たことねぇよ」
「・・・・・・」
不意に黙るルフィ。それを横目で見て、茶化す場面でもなさそうだと、ウソップがいったん口を噤む。
「どーしたんだ。ルフィ。おれに聞いて欲しいことがあんなら言ってみろー」
「・・・・・・・・・」
ごろりと寝っころがって、ウソップはルフィの言葉を待つ。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「おーい。このまま寝ちまうぞー」
「・・・・・・・・・」
「ふぁ〜あ」
ふざけて出した欠伸が、最後には本物になり、ウソップの目尻には涙が滲む。
あふぁ〜 と、気の抜けたような2度目の欠伸が出たとき、ルフィは口を開いた。
「おれ、バカなんだよ」
「ふぁ?」
「もう後悔してんだ」
「あ?」
ウソップがガバリと起き上がる。
ウソップの言葉を待たずにルフィは続ける。
「自分でそれがいいと思って、行動して、それがアイツにとっても1番いいと思ったんだ。
だけどよぉ。なんなんだ、なんでなんだよ。おれって、こんなにダメなヤツだったっけか?」
「・・・・・・・・・」
「後悔してんだ。・・・・もう。」
アイツに、あんなメールを送ったこと。
自分から、に距離を置いたこと。
そう言ってルフィはまるで重い頭を支えきれないというように、ゆっくりと俯いた。
ウソップからは、ルフィの表情は見えない。
「つれぇー」
下を向いているせいか、ルフィが鼻をズズっとすする。
「・・・・・・・・」
ウソップは黙ってルフィから視線を外して、ルフィと同じように俯く。
そしてポンポンとルフィの頭を叩いて、口を開いた。
「おれぁにはよく分かんねぇけどよ、後悔するなんてルフィらしくねぇじゃねぇかよ。
・・・・後悔してんだろ?つらいんだろ?
どーすりゃ後悔しねぇのか、つらさがなくなるのか、お前、もう分かってんじゃねぇのか?
お前らしくいけよ。今まで、・・・・ずっとそうだったじゃねぇか。」
「・・・・・・・・」
友人の言葉をかみ締めているかのように、ルフィは瞳を閉じた。
再び開いたルフィの瞳には、もう迷いはなくなっていた。

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