狩られたのは、おれの方だった。
* 愛を狩る *
たった一瞬で、人は人を好きになることがあるんだな。
に出会って、そういうこともあると、知った。
まぁ、俗に言う、一目惚れってヤツなんだけどな。
との出会いは、1年半くらい前か。
あの日、おれはバイト帰りに本屋に寄って、
テキトーに暇のつぶせるミステリー小説なんぞを買った。
店を出ようとしたら雨が降ってて。
傘はねェし、しょうがねェから買った本を腹んとこにいれて、バス停まで走ることにした。
バス亭に着いたはいいが、バスは時間だというのに来る気配はなく、
一人の女がおれより先にバスを待っていた。
その女が、おれに気付いて、目が合った。
心臓が跳ね上がる感じがした。
目が離せねェ。
よく分かんねェが、なぜだか鼓動が速くなって。
そしたら、女が近寄ってきて、
「あの、これ使ってもいいですよ?
えと、私はバスに乗るんで、もうすぐ来ると思うし」
これには、素で呆れたけどな。
「いや、おれもバス待ってるんで」
っていうかおれが並んだ時点で気づけ!
「えっ、あっ!そうですよね!あは、ごめんなさい」
でも、傘を差し出した手前、引っ込みがつかなくなったらしく、
「でも、使ってもいいですよ。そんなに濡れてちゃ風邪引きますよ」
と、まだ笑顔で言ってくる。
「いや、ここまで濡れたら変わんねェから」
それをおれは真顔で返し、またソイツは困ったなーみたいな表情をする。
自分一人で使ってりゃいいじゃねェか、と思う反面、
おれは少なからず、嬉しかったんだ。
「じゃ、じゃあ半分こで」
「いや、いい」
即答で返した。
そんなこっ恥ずかしいことできるかっ!!
雨に濡れてるやつが傍にいるなか、自分一人だけ傘を差しているということが、
我慢できなかったんだろうな。
おれたちの出会いは、の優しさから始まったんだ。
狩られたのはおれの方。
狩ったのはお前だ。
どんな状況でも、狩られたヤツのが負けなんだよ。
ああ、だからか。
おれはやっぱり、どんなことがあっても、
お前を嫌いになれねェみてェだ。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
なぜか嫉妬ていうか、一途ゾロになってる!!
|